みぢかを機能で考える <第5回>
Original 2017/4/20
このブログのスタート時に「機能で考える」ということについてお話しさせてもらいましたが、その「機能」とは以下のような見方をすることに特徴があることを説明しました。
1. 何のために(目的)、何をどうするのか(手段)を考えて、Input・Process・Outputを表現する
2. 物理特性で表現(エネルギーとか、温度、圧力といったもの)
今回は1.の「何のために(目的)」について考えたいと思います。
目的をとことん考える
私もいくつかのスポーツを楽しんでいるオヤジです。
サッカー、サーフィン、スノーボード、マウンテンバイク・・・・・。それぞれ長く続けていますが、歳とともに、目的・楽しみ方が変化してきました。
その中でもサッカーは、学生の時分に取り組んでいたものです。 小学生の時は部活でサッカーをしていましたが、中学、高校は一旦離れ、そして大学に入学してあらためてサッカーを始めました。
大学での活動では中学、高校6年間サッカーをやってきた人がほとんどで、彼らはその経験を通して基本的な戦略・戦術を持ってプレーをしていました。
一方、私は小学校以来の本格的な活動であり、基本的な戦略・戦術を理解していたわけではなく、練習や試合ではピッチ内で動き回るのが精一杯で、ただ体力を消耗するだけでした。 今思い返してもこの1年生の夏、暑いピッチ上で苦しい思いをしていたことが鮮明によみがえってきます。
しかし、練習を重ね戦術を理解することで、私もチームの一員として「機能」するようになってきました。
そのとき学んだ戦術の主眼は「いかに多く得点して勝つか」。 つまり攻撃の進め方が主だったのです。
そんな私も3年生の時、チームの中心としてリーダーシップを発揮する役回りとなりました。 ところが、新チームが所属していたリーグ戦で全く勝てず、どん底状態になったのです。 その時、私はこれまで学んだ戦術「いかに多く得点して勝つか」を主眼にポジションを決めましたが、残念ながら失点が多く、結果として勝つことができなかったのです。
リーグ戦の終盤から、どうチームを変えていったらよいかチームメンバーと共に考え、失点しない守備をまず設定することにしました。「得点して勝つ」から「失点を防いで勝つ」ことを戦術の主眼にしたのです。
加えて、パス回しを早くすることで、攻守の切り替えを早くできるように練習を重ね、次節のリーグ戦では、よい成績を残すことができました。
目的・手段でとことん考える
改めて考えてみます。 勝つためにはどうすればよいのでしょうか?
「得点>失点」を実現することですよね。
大学生活の最初は私が組織の中でサッカーに取り組むことが小学校以来、久々であることもあり、とにかくチームのメンバーとして得点することに尽力していました。 つまり「得点する」こと自体を目的に動き回っていました。
しかし、勝つためには「得点>失点」であり、得点することはそのための手段ともいえます。
3年生になったとき、私はチーム活動の責任の一角を担うようになり、勝つためには「得点>失点」であることを改めて認識し、「失点を防ぐ」ことも重要な目的として捉えたのです。
しかし勝つためには「得点>失点」であり、失点を防ぐことも得点することと同様に勝つための手段ともいえます。
目的と手段のツリーで表現すると大体こうなると思います。
ここで考えておかないといけない大事なことは、サッカーは11人のチームが攻守両方を行うことです。
同じ選手でも攻撃にまわったり、防御にまわったり。
もちろん、FWの選手は攻撃がメイン。キーパーは殆どが防御です。
しかし、FWの選手でも守りにまわりますし、キーパーの最初のキックは攻撃の始まりといえます。最下段のブロックは同じ選手が状況に応じて対応しないといけないのです。
このように、勝つという「目的」に対して攻撃と防御を切り替えつつ、11名の固定されたメンバーでゲームを進める必要があるのです。 チームがもつ得点の機能を高めたり、防御の機能を高めたり、異なる機能を配分しながら戦わねばならないのです。
同じようなことがいろいろな製品のシステムでもいえると思います。
例えばタイヤ。 車の乗り心地や、操舵安全性に大きな影響を与えています。
タイヤのスペックをリアルタイムで変えることはできませんが、車の求められる性格に応じて、乗り心地や、操舵安全性にどのように機能を配分していくか、これを考えることが必要です。
よく言われるのが「背反」という言葉。 あちらを立てれば、こちらが立たず。 タイヤでも乗り心地をよくしようと思ったら、操舵安全性は悪化するかもしれません。
しかし、機能を配分するという考え方に立ち、高いレベルで両立することもできると思っています。
目的とする機能を物理特性で表現し、物理の原理原則にのっとり紐解くことに取り組んでいく。
そこにポイントがあると思っています。
サッカーワールドカップに日本代表チームが初めて本選に出場して以来、その活躍ぶりは目を見張るものありますね。 チームが勝つための機能をフレキシブルに配分しながら「勝つ」という目的を果たし続け、本選でもいつかは最後まで勝ち抜いてくれることを願ってやみません。