TVドラマをわざわざ映画化する価値はあるか?

みぢかを機能で考える <第30回>

Original 2018/5/29

第24回のブログで映画を映画館で見る価値、家で見る価値についてお話をしました。

映画というコンテンツを「モノ消費」するか「コト消費」するかの違いとではないか、が結論でした。

ではここで映画というコンテンツについて考えてみたいと思います。

ジャンルの違い、名作・駄作の違い、新旧の違い、技法の違い等、論じるべきポイントはいろいろあると思いますが、一番やっかいなポイントにあえて首をつっこもうと思います。

それは首題の通り、「TVドラマ」と「TVドラマの映画化」の違いです。

そもそも、TVドラマをなぜ映画化する必要があるのでしょう?

TVドラマだったらTVの中で済ませておけばいいのに。

しかも、娯楽の主体が映画からTVに移りつつある時代でもTVドラマの映画化は行われており、はやり廃りとは関係なく、脈々と続いていたりします。

大人の事情的には、

映画業界:オリジナルの企画を考えるより楽だし客層も見込めるし、何より広告宣伝する必要がないので気軽!

TV業界:2時間の特番を作るだけ。 別にTVだろうと映画だろうとどっちでもいいが、映画の方が話題になるしお金になるからいいかも。

という身も蓋もない事情がありそうですが、みぢかを機能で考えるのがこのブログのお題です。 お金ではなくコンテンツの本質に目を向けて、製作者としての思いと志について素朴に純粋に考えてみたいと思います。

その視点で、TVドラマが映画化される要因をいろいろあげてみました。

  1. CMや時間枠といった制限のない自由なドラマ作りをしたい。
    TVは、1話1時間弱という制限、そして何分かおきに話を途切れさせるCMの存在のためにシナリオに制約が生じてしまう。 本当に作りたい物語を自由に創作したい。
  2. 映画の方が予算をかけられるので、派手なことができる。
    多分、想像だが映画の方が予算をかけられそうなので、そうだと仮定して、役者やCG等の絵作りに金と時間をかけて、思う存分好きな映像を作りたい。
  3. 映画という歴史の長いジャンルの中で作品として勝負したい。
    映画はTVより昔からあり、数多くの歴史的名画が存在している。その名画たちに並んでも遜色のない名画を創作したい。
  4. 大画面で迫力のある映像を楽しんでほしい。
    日常とは違う大画面ときれいな映像と迫力のある音量に囲まれながら、雑音と邪魔のない環境でドラマの世界にじっくりと思う存分浸ってほしい。
  5. ドラマファンが集って一緒に楽しめる場を提供したい。
    いつもは1人でもしくは家族で見ているだけだが、映画館での上映となれば、そのドラマのファンが大多数であり、感動をその場にいる人全員で共有できるので、感動がさらに強まることが想定される。 ファンへのサービスのため、もしくはそのファンからの口づてで1人でもファンが増えることを願って創作したい。

といったところでしょうか。

1・2・3は製作者サイドのクリエイティブな要因、4・5は視聴者のためを思った要因になります。 

いずれも作品に対する愛が無ければできないことです。

かつ4・5はTVドラマの視聴という日常から、非日常の「コト消費」の機会を作る作業でもあります。これはある意味ファンに対するプレゼントではないでしょうか?

「別にTVの特番で十分じゃん」と言わずに、そのドラマのファンであるなら、純粋な思いで素直に映画館に足を運んでみてもいいのではないでしょうか?

TVのスイッチをつける、もしくは録画予約する、という単純な行為だけではなく、お金を払って時間を作って映画館に行く、というイベントがそのドラマに対する思いを増幅させて更なる感動を呼び起こすかもしれません。(大人の事情の思う壺かもしれませんが・・・)

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