マウンテンバイク(MTB)のライディングポジション再考

みぢかを機能で考える <第22回>

Original 2017/9/13

私には三十年来の付き合いになるMTB仲間がいますが、私の家庭の事情で彼らとも少々つき合いが悪くなり、サマーシーズンのMTBフィールドに行く機会も減ってきました。 数年前まではレース出場の度に会場となるスキー場に行っていたのです。 今は、レースからは退きましたが、その爽快感からMTB/ダウンヒル(以下、DH)は続けています。

どんな形や構造にも理由がある

最近のDHバイクは、スピードアップと操縦性向上のため、次のような構造や材質が主流になりつつあります。

  • フレーム素材:アルミ → カーボン
  • サスペンション(サス):コイルスプリング → エアースプリング
  • ホイル径:26インチ → 27.5インチ
  • タイヤ幅:2.5インチ → 4インチ

特にホイル径が大きくなると、ホイルの交換だけではなく、フレームや、サスペンションまで交換することになります。 どこの業界でもスタンダードを変更することは、機能水準の向上を狙ってのことだとは思うのですが、なにやら業界ぐるみの何か別の意図を感じざるを得ません(笑)。

そんな中でロートルダウンヒラー(私です…笑)は26インチ、アルミフレーム、コイルスプリングという仲間うちでは「旧車」と呼ばれるスペックでコースに出ています。 サスのセッティングだの、ブレーキの調整だのを行ってコースに出るわけですが、最近なかなか乗り心地というか取り回しがしっくりこないことに気がつきました。

タイヤのエアー圧、フロント/リアサスの圧縮側と伸び側のダンピング特性は走るごとに変更し、最大ストロークの記録をとりますし、私のインプレッションも残し、チェックしています。 

しかし、なかなか思うようにならないでいました。 特にコースでハイスピードのガレ場の部分での衝撃吸収を何とかしたかったのですが…。

(注:ガレ場とは普通の道とは違い、岩壁や斜面から崩落した岩クズが辺り一面に散乱して堆積している場所のこと)

そんなことで悩んでいる中、バイクショップで知り合いのエリートライダー(彼は50歳を超えているが日本のトップ50に入っているのです!) から、

「ライディングポジションがあってないのでは?」

との一言があり、以下のサジェスチョンをもらったのです。

  • ハンドルステム(フロントフォークとハンドルの結合部)を5mm短くし、位置を20mm上げる
  • ハンドルの位置を20mm上げる
  • サドル高さを30mm下げる

つまりハンドルグリップの位置を40mm上げて、5mm体に寄せる、尻の位置を30mm下げる。 コース走行時にライダーの重心がバイクの重心上にくるような狙いです。

また、これまでハイスピードのガレ場では腕への衝撃がかなりきついと感じていました。 これはポジションが前のめりになっているため、腕への荷重分担が足側より増えている状態であったことによるものと思われます。

早速、ハンドルのポジションを変更して、コースを走ってみると、確かに乗りやすく、走行時の安定性が増したように感じられました。

また、ポジションが前傾していたため、トータルの重心がフロント側にあり、リアサスを有効に使える状態ではなかったと思います。ポジションの変更により、この点も改善できました。

更にサドルの位置を下げたことにより、重心移動しやすいポジションとなり、走路の傾斜度合いによって自分の重心とバイクの重心を意識しながら、腕と足でより衝撃吸収ができ、ブレーキング時の荷重移動に対応しやすいポジションをとることができるようになったと思っています。

先のエリートライダーは現在ではサスのセッティングよりむしろ、ライディングポジションの調整に多くの時間を費やしているとのことで、数mmのポジション変更で走りが激変することも珍しくないらしいです。

後日、サドルも下げて別のコース(斜度のゆるいコース)を走ってみると、確かに安定性が向上していることが感じられました。

またポジションの自由度が増し、コースの状況に応じたポジション取りできるようになってきました。 この自由度向上はコースの変化、あるいはコーナー曲率、バンク角などに応じた重心移動を自由にできることを意味し、それに合わせたライダーとしてのトレーニングも必要となりました。

このポジション取りは、脚力をかなり使うようになり、これまで先の斜度のゆるいコースで筋肉痛などなったことがなかったのですが、今回は大腿四頭筋の内側広筋がひどく痛みます(笑)。

重心のもつ意味、その機能を改めて認識できた出来事でした。  MTBに限らず、 どんなスポーツでも重心の使い方は重要だと思います。 特に道具と組み合わせて重心移動のあるモーターサイクル、スキー、スノーボード、サーフィンなどはみな同じことが言えるのではないでしょうか。

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