みぢかを機能で考える <第21回>
Original 2017/9/07
9月になって幾分涼しくなりました。 今年の夏は、雨の日が多く、またゲリラ豪雨も各地で発生していますね。 「傘持ってないよ!」というときもあったでしょうけど、傘を持っていても役に立たないほどの豪雨もあったでしょう。 今回は「傘」の機能を考えてみましょう。 夏は日傘も大活躍ですが、ここでは雨傘について考えてみます。
傘の目的を考えると、
1)「雨の日の外出時に体を濡らさない」
2)「雨が止んだら閉じて邪魔になりにくい」
というようなことが出てきます。
本質的な目的は、あきらかに1)ですね。2)は付加的なものといえると思います。
ニーズによって個別機能の重みが変わってくる
その昔、日本で「番傘」のようなものができるもっと前には、「かさ」と言えば、頭からかぶる「笠」だったと思います。 「かさ地蔵」がかぶっているもの、というとおわかりでしょうか。
この笠をかぶり、蓑(みの)を羽織って、雨をしのいでいたのです。
この時の「笠」の機能は、「雨(が、特に頭に当たるの)を防ぐ」というものであり、上記の目的の1)だけに対応していました。
そのうちに、時代が下ると
「雨が止んだときに笠や蓑がじゃまになる」とか、
「蓑や雨合羽などを着ないで、雨の日もスマートに歩きたい」という
要求がでてきたものと思われます。
それに対応したのが「(普段着を濡らさないほどの)大きい傘が、使用後はコンパクトに閉じられる」という付加機能であり、それは上記の目的の2)に対応したものです。
この機能を実現するために、骨の構造を工夫し中心の棒の上をスライドする機構(下ろくろ)を設けたということです。
このように、要求(ニーズ)が変化(高度化)すると、それに対応して機能を変化させた新しい製品が出てくる、ということです。 まさにエジソンの言葉通り、「必要は発明の母」ということですね。
現代になると、さらに「使わない際にはカバンに入れたい」とか「片手で開きたい」という要求が出てきて、それに対応する「折り畳み傘」や「ジャンプ傘(ワンタッチ傘)」というバリエーションが生まれていますね。
傘には和傘と洋傘という分類があります。 最近では一般的に使われているのは洋傘ですね。
和傘の開閉の仕組みは日本で独自に考えたものらしいので、洋傘とはまったく別に生まれたということになるのに、仕組みがとても似ているのが面白いですね。
ただし、洋傘は骨を外側へ開く力と布の張力とをバランスさせることで形を保つのに対して、和傘は紙の強度に頼らずに骨だけで持たせるために、骨の本数が多くなっています。使用する材料が違うので、機能を実現する方法が少しだけ異なるということになります。
タイトルにも記しましたが、一人当たりの傘の所持数は日本が3.3本で世界一だそうです(2014年のウェザーニュース社の発表から。2022年では4.2本に増えたらしいので恐らく今も世界一でしょう)。 自宅や職場・学校の傘立ての状況をみるともっとありそうですが(笑)。 傘の機能は日本人にとっては生活の中で大事な要素となっているに違いありませんね。
これから傘を使う際に、先人の知恵による構造を、少し眺めてみてはいかがでしょうか。