同じ映画なのになぜこんなにたくさんの種類が?~ディレクターズカットの功罪

みぢかを機能で考える <第19回>

Original 2017/8/09

DVDやブルーレイディスクをメディアとした映画やドラマ作品を買うと、ほとんどの場合「映像特典」がついてきます。 予告編集だったり、メイキングだったり、製作者のコメントだったり、NG集だったり、未公開映像だったり、果ては別エンディングまで付いていたりします。

その中で今回私が話題にしたいのは「ディレクターズカット」というものです。 要するに未公開映像を本編に加えて、劇場公開版より長い尺にしてDVDやブルーレイディスクをメディアに販売するというものです。 ディレクター=映画監督ですから監督が本来やりたかった編集のバージョンということでしょう。

付加的な機能が実はそもそもやりたかったこと…⁈

ディレクターズカットの機能とは何でしょうか?

  1. 商業的理由(上映時間や観客受けのため)により削除せざるをえなかったが、本当に監督として作りたかったバージョンを是非見てほしい、という監督の自己顕示欲を満たす。
  2. 劇場で見た観客が、DVDやブルーレイを買いたくなるようなモチベーションを与える。
  3. 映画のファンが別バージョンを是非見てみたいという好奇心を満足させる。

おそらく全てでしょうけれど、一つずつみていきましょう。

まず1ですが、個人的にはこのようなことはあってほしくないですね。 プロデューサーともめたとかの内幕は正直見たくも知りたくもないので。(小ネタとして興味はあるけど。)

世の中に商品として送り出すのですから、製作者は100%とまではいかないにしても、芸術作品である以上は、それなりの納得感・満足感・達成感をもった作品を作ってほしいものです。

いろいろディレクターズカットを見てきましたが、やはり劇場公開版が一番シンプルでテンポよくまとまっている場合が多いと私は思っています。

また、ディレクターズカットによっては、どこが増えたのか気付かなかったり、劇場公開版と何が違うか分からなかったりして、ディレクターズカットって、あまり意味がないのでは、とも最近思い始めています。

実際、劇場版があくまでもオリジナルであり作品として優れていて、ディレクターズカットはオマケでしかないと語っている監督もいるそうです。

だとしたら長い時間かけて本編含めて見るよりも、映像特典として未公開映像だけオマケとして付いていた方が視聴者としてはありがたいのではないかと思ってしまいます。

つぎに2、3の機能ですが、以前「限定品」の話題の時にも書いたとおり、ある意味DVD・ブルーレイディスク版を買わなければ見られない、という希少価値的な側面もあり、購買意欲をそそるモチベーションとしては意味があると思います。 実際同じお金を払って100分の劇場公開版を買うより、110分のディレクターズカットを買った方が10分お得感はあります。実際に私も「オマケ」のついた後者を選びます。

でも・・・されど10分・・・です。

純粋にその映画のファンで、いろいろなバージョンを見ることを楽しみにしている人、要するに3の機能を楽しみにしている人ならいいのですが、単純に数字を比較して「10分多いから」で選んで本当にいいのだろうか、と考え始めました。

上記の通り劇場公開版の方がまとまっているケースが多く、その場合、追加10分は「オマケ」ではなく「蛇足」になります。要するに不必要なもの、邪魔で余計なものです。

有限で時間的制約のある命を持つ人間にとって、その無用の10分を使う余裕はあるのだろうか?ひょっとしたら他のことをした方が有効なのではないだろうか?と年齢を重ねてきてしまった筆者は思ってしまうわけです。 (若い人は考えないでしょうね)

追加10分は「有効なオマケ」なのか「時間の無駄」なのか。 今後は、DVD、ブルーレイディスク版を買う時はその機能が持つ、自分にとっての価値をじっくり考えてみたいとることにします。

P.S

価値を考えるのに20分迷うとしたら、追加10分を見た方がましかも・・・

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