みぢかを機能で考える <第18回>
Original 2017/7/26
日頃はあまり話題にならない(しない)ものですが、毎日必ずお世話になっているものがあります。
そのうちの一つ、「トイレ」の機能を今回は考えてみましょう。
まずは、「トイレ」の目的を考えたいのですが、今回は逆に「トイレがなかったらどうなるか」を考えると、トイレがどのようにありがたいのかが見えてきそうです。
トイレがないと:
1)排泄物が、生活空間にたまってしまう
2)たまった排泄物が腐敗し、不衛生になる
そうすると、「トイレの機能」は
1)排泄物を生活空間から隔離する
視覚的に隔離、臭いを隔離、虫が入らないように隔離、など
2)隔離した排泄物を処理する
薄める、化学的に分解する、再利用する、など
というところになりそうですね。
これらを実現する方式として、昔ながらのポットン式とも呼ばれていた「汲取式」と「水洗式」を考えてみましょう。
一つ目の隔離する機能では:
- 汲取式は、視覚的には隔離できても、臭いの隔離はできませんでした。
- 水洗式は、視覚的にも、臭いも隔離でき、虫なども入らないようにできます。
二つ目の処理する機能では:
- 汲取式は、基本的には人手で処理し、畑で肥料として再利用していました。
- 水洗式は、トイレというよりも、公共の処理場がこの機能を賄っています。
すなわち、水洗式はトイレというよりも巨大な下水処理システムの一つとして考えなければならないということになります。
本質的な機能と付加的な機能
現在の(日本の)トイレを考えると、上記の基本的な機能以外に、様々な機能が追加されています。
すぐに思いつくのは「温水洗浄便座」でしょう(商品名でなく一般名で書くとこうなるようです)。
これらは「排泄後のおしりを、できるだけ清潔にしたい。 しかも自分の手をできるだけ汚したくない。」というような、ユーザーの要求から生まれてきたものと思われます。
このようなトイレの機能は、日本独自のものらしく、外国人が初めて日本に来るとびっくりするらしいですね。中には、とても気に入って輸入して自宅に取り付ける人もいるとか。
日本のモノづくりの強さは「品質の良いものを安く製造すること」とずっと言われてきましたが、このようなトイレの付加機能が生まれるのは、「日本のユーザーの品質を含めた機能への要求が高いこと」によるわけであり、これ自体も日本の製造業の強さの源泉ではないかと考えています。
さてここまでは、排泄物が「いらないもの」「見たくもないもの」という前提で話をしてきました。
しかし、健康管理の視点からは、「排泄物を見ましょう」という話も聞こえてきます。
排泄物の大きさ、色、性状などから、健康状態(正確には消化器系の状態)がわかるというのです。
みなさん、排泄物(大きい方)は何からできているかご存知ですか?
実は、食べ物のカスは2割ほどで、それ以外は自分の細胞の死骸や腸内細菌の死骸だそうです。
だから、消化器の状態が顕著に表れるということですね。
近い将来、今流行のAIやIoTとの組み合わせで健康状態を判別してくれるトイレ、というのも商品化されるかもしれませんね。
実際に商品になるかどうかは、日本人の機能への要求がどこまで高くなるのか次第といえるでしょう。
今回は、日ごろあまり話題にしない「トイレ」をあえて取り上げてみました。なくてはならないものですし、今後、いろいろと発展しそうな気配を感じてちょっと楽しみに思っています。