目覚まし時計の機能とは…?

みぢかを機能で考える <第14回>

Original 2017/6/28

昨今は一日中、PCやスマホを眺める時間が増え、睡眠に影響を及ぼしているという話があるようです。十分な睡眠をとったうえで朝日と共に目が覚める、なんてなかなか難しい状況になりました。

今回は「目覚まし時計」の機能を考えてみましょう。

この連載も回を重ねているので、ずっと読んでいただいている方には「大きな音を鳴らして、人を起こすこと」という答にはならないことはもうおわかりでしょう。

目的と手段を考えてみる

まずは、「目覚まし時計」を使う目的を考えてみましょう。

「特定の時間に、目を覚ましたい」ということは共通であっても、細かくみていくと、いろいろな目的がありそうです。 例えば:

1)今晩は寝るのが遅くなってしまったが、明日は朝から仕事で重要なミーティングがあるので、短い睡眠時間でも「無理矢理」XX時に起きる

2)十分な睡眠を取っているつもりなのに朝起きるのが苦手なので、毎日△△時に「健康的に」起きる

等々。

次に、「目を覚ますための手段」を考えてみましょう。

一般的な目覚まし時計は、「大きな音を出して、目を覚まさせる」という手段を使います。

これは、音という刺激が、目を覚ますのに有効だろうと考えたから、また音を出すという手段が比較的容易に実現できるから、歴史的にそういう方式の目覚まし時計が作られ、そして使われてきたと思われます。

人を起こすためには、人に何らかの刺激を与えるというふうに、少し一般化して考えると、他の方法もいろいろと考えられそうですね。五感を順番に考えると、聴覚以外に以下のような感覚に訴えるものが考えられます:

  • 視覚:光の刺激を与える。明るくする ・・・これは照明を使った目覚ましシステムで実際に使われています。
  • 触覚:なんらかの形で触って起こす ・・・お母さんが子供を揺すって起こすのもこれに近いですね。
  • 嗅覚:何らかのにおいをかがせる ・・・これに相当する機械は聞いたことはありません。いいにおいがいいか、いやなにおいがいいか、いろいろな仮説が出そうですね。でも、柑橘系のジュースや皮のにおいをかがせると起きやすいような気がしますね。
  • 味覚:これは口にチューブでもくわえさせないと行けないので、なかなか実現が難しいでしょうね。

五感以外でも例えば

  • 脳に弱い電気刺激を与えて、何らかの夢を見させて起こす ・・・将来的に脳や夢の研究が進めば実現するかもしれません。
  • 体感温度を調節して起こす ・・・起きる頃には体温が上がっているということを考えると、案外現実的かもしれません。

と、ここまでは「手段」をメインに話してきました。 そうです。これだけでは機能から考えていることにはなりませんね。

では、目的と手段をつなぎ、機能全体を詳しく考えてみましょう。

そのためには、まず「目を覚ます」ためには体がどういう状態になっていなければならないかを考えるとよいですね。これが機能で考えることのゴールの一つである、「カラクリ」解明の第一歩になります。

「からくり」とは、“からくり人形”に代表されるような、古い時代の機械的仕組みのことです。 機能で考える場合のカラクリとは、「実現すべき機能を達成する為の個々の機能間の関係や機能を構成する因子の本質的な構造およびそれを表したもの」と定義しています。

そもそも何を実現したいのか考えてみる

話を元に戻して、眠っている状態と起きている状態を詳しくみていきましょう。

例えば:

眠っている状態:

  • 意識がない、脳が休んでいる(完全に休んでいるのはなく、夢を見ている可能性がありますが、それも含めて)
    • 自律神経系では、副交感神経が優位
      体を休めて、回復している状態
      体温も低めになっている

         → そのために、セレスタミンというホルモンが出ている

起きている状態:

  • 意識がある、脳が活動している
    • 自律神経系では、交感神経が優位
      体がいつでも活動できる状態
      体温も高めになっている
            → そのために、アドレナリンやコルチゾールというホルモンが出ている

「目を覚ます」とは、この眠っている状態を、起きている状態に変えるにはどうしたらいいか、という問題です。

いわゆる「目覚まし時計」は、音の刺激で、無理矢理意識を回復させようとします。

しかし、体が活動できる状態でなければ、どうでしょうか?

低体温や、ホルモンバランスが良くない場合などは、音の刺激で意識だけを
急に回復させようとしても、体がついてこないので、起き上がれない、
すると、そのまままた寝てしまう、ということが起きるのです。

そうすると、刺激を与えることばかり考えても、それですぐに起きられるわけではない、ということがわかってきます。

ではここで、「目覚まし時計を使う目的」の1)にあった「睡眠時間が短い時に、無理矢理起きる」という目的に対応するために必要な機能を考えてみましょう。

無理矢理起きるのですから、健康的でなくても(一時的に体に負担をかけても)構いません。

例えば、

  1. 意識を回復させるための刺激をたくさん与える
  2. 交感神経を強制的に優位にする

というようなことが考えられます(2. は少し過激ですが、未来の世界では悪影響が出ないような適切なホルモンの投与の仕方が見つかっているかもしれません)

  1. としては、音だけでなく光、振動など様々な刺激を組み合わせるのもいいかもしれません。

次に、「目覚まし時計を使う目的」の2)にあった「十分に睡眠は取っているが、健康的に目覚める」という目的に対処することを考えてみましょう。 ・・・これが一番、人間として理にかなった起き方を助けることになるかと思います。

健康的に、毎日起きることを助けるのですから、体に負担をかけてはいけません。理想的には、しばらくこれを使ったら、自然に体が適切な時間に起きられるようになって、そのうちに助けが要らなくなる、というものが望ましいですね。

例えば

  1. 意識を回復しやすい(適切なタイミングで交感神経が優位になる)ように体のリズムを整える
  2. 意識を回復しやすいタイミングで必要最小限の刺激を与える

ということが考えられます。

1. を実現させるためには、起きる瞬間だけでなく、事前の準備として「食事、生活のリズム、運動」など様々なものをサポートする、ということが考えられます。

2. は、例えばカーテンを開ける、部屋の温度を少しだけ高くする、などで済んでしまうかもしれません。大きな音は不要になるのが理想ですね。

こうしてみると、もはや一般的な「目覚まし時計」からはかけ離れているかもしれませんが、「目覚ましシステム」を考えるということなら、納得してもらえるでしょうか。

今回は「機能で考える」ということについて、目覚まし時計を例に目的と手段を考えながら全体や詳細をみていく、ということを少しお話してみました。

では今日はこのくらいで。

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